アーティファクトで、何か作ってみたかった

きっかけは単純で、アーティファクトで何か作ってみたかった。

Boxの管理画面を作った記事で書いたとおり、アーティファクトは「実行ボタン」から「常設の画面」まで作れる。ただ、作れることが分かっても、何を作ればいいかは別の問題だ。道具を先に手にして、使い道を探している状態だった。

朝礼で見かけた光景

使い道は、朝礼にあった。

毎朝8時、Teamsにいくつかの通知が自動で届く。上司から頼まれて、以前Power Automateで作ったものだ。今は4種類ある。実施漏れ、連携漏れ、登録漏れ、未完了——どれも「やり忘れがないか」を知らせる通知だ。

もとをたどると、どれも誰かが毎日手でやっていた確認だった。管理職がSalesforceのレポートを開いて数字を拾っていたものもあれば、自分が朝礼前に集計していたもの(未連携チェックの記事)もある。それを自動投稿に置き換えた。

ある朝、朝礼を見ていて気づいた。

上司が、その投稿を開いて読み上げていた。

通知はちゃんと使われていた。見られていない、ということはない。ただ、4つの投稿を順番に開いて、数字を口頭で伝える——Teamsと朝礼のあいだを、人がつないでいた。

書類チェックの記事で「出口が大事」と書いた。この通知には出口があった。朝礼だ。でもその出口まで、最後の一歩は人が運んでいた。

人が読み上げているものは、まだまとめる余地がある。

投稿を1つずつ見に行かなくても、全部が1画面に集まっていて、その横に朝礼で話すことをメモできる。管理職にとって便利なのは、たぶんそういう画面だと思った。

作ったもの

毎朝8時20分に自動で更新される画面を、アーティファクトで作った。

表示するもの 内容
4種類の通知 それぞれの件数(登録漏れは内訳も)
元の投稿へのリンク 各項目からTeamsの投稿へ飛べる
本日未更新の表示 その日のデータがまだ来ていなければ「⚠️ 本日未更新」と出す
メモ欄 右側に自由に書ける。書いた内容は自動で保存される

地味だが気に入っているのは「本日未更新」の表示だ。数字が昨日のままでも、画面だけ見ていると気づけない。古い情報を新しいものと思い込むのがいちばん怖いので、はっきり分かるようにした。

2回失敗した

画面の形はすぐ決まった。難しかったのは、データをどこから持ってくるかだった。

1回目:Teamsの投稿を直接読む → 断念

最初に考えたのは素直な方法だ。社内のClaudeには、TeamsなどMicrosoft 365とつながる機能(コネクタ)がある。それで今朝のTeams投稿を探して、数字を読み取ればいい。

ところが、試してみると使えなかった。

  • 「日付で絞る」ことと「チャネルの投稿を探す」ことが、同時にできない。 日付で絞れる探し方はチャネルの投稿に対応しておらず、チャネルの投稿を探せる方法は日付で絞れない
  • キーワードを変えて何度も探そうとすると、呼び出しが多すぎると拒否されて、結果が0件になる

「今朝の、このチャネルの投稿」という一番ほしい探し方が、仕様の組み合わせでできなかった。どこにも書いていない制約で、試して初めて分かった。

2回目:SharePointのリストを経由する → 断念

次に考えたのは、Power Automateに結果を別の場所へ書かせる方法だ。Teamsに投稿するついでに、SharePointのリスト(表のようなもの)にも書き込む。

書き込みは成功した。ところが今度は、Claudeの側にSharePointのリストを読む手段がなかった。

書けるのに、読めない。これも実際にやってみて初めて分かった。

3回目:Boxのファイルでつなぐ → 成功

最後にたどり着いたのがこれだ。

Power Automate(毎朝8:00)
    ↓  これまで通りTeamsに投稿
    ↓  同時に、BoxのTXTファイルに結果を上書き保存
         (投稿日時・件数・Teamsへのリンク)

アーティファクト(毎朝8:20)
    ↓  Boxのファイルを読んで、画面に表示

BoxはClaudeから問題なく読めることが、前に作った管理画面で分かっていた。Power Automate側は、既存のフローに**「Boxへの書き込み」を1つ足すだけ**で済んだ。

3回目も、ファイルでつないだ

書いていて気づいたのだが、これは3回目だ。

記事 何をファイルでつないだか
書類の仕分け 仕分けが終わった合図
書類のチェック 新しく増えたフォルダの一覧
今回 毎朝の通知の結果

どれも「直接つながらないものを、ファイル1つでつなぐ」形になっている。

システム同士を直接つなごうとすると、仕様の壁や権限の壁にぶつかる。今回の1回目・2回目がまさにそうだった。でも「ファイルを置く」と「ファイルを読む」は、たいていどのツールにもできる。

つながらないなら、ファイルを置けばいい。

3つの別々の仕事で同じ答えにたどり着いたので、これは非エンジニアが自動化するときの定石と言っていいと思う。

今のところの弱点

正直に書いておく。

弱点 内容
Boxとの接続が、たまに切れている 毎回ではないが、朝開くとBoxとの接続が切れていることがある。そのときは手動でつなぎ直す必要がある
土日は更新されない 元のPower Automateが平日しか動かないため

1つ目は、いつ切れるのか法則がまだ分からない。なので画面の側で備えることにした。接続が切れていたら数秒後に自動でもう一度試し、それでも駄目ならつなぎ直しの手順を画面に表示する。切れていること自体に気づけないのがいちばん困るので、そこだけは確実に分かるようにしてある。

正直に言うと、使っているのは自分だけ

ここまで書いておいて、いちばん大事なことを書く。

この画面を使っているのは、今のところ自分だけだ。

理由ははっきりしている。社内でClaudeを使っているのは自分だけで、上司にはこの画面を開く手段がない。管理職向けに作ったのに、管理職が見られない。

だからこれは、今の時点では提案のための試作品だ。トライアルの月次報告に「管理職向けに、こういうものも作れます」と載せるために作った。

作れる人と、使ってほしい人が違う。

書類チェックの記事で書いた「誰も見ていない」とは少し違う。あちらは見る人が決まっていなかった。今回は見る人が決まっているのに、その人に届ける手段がない。

社内でAIを1人だけ使っていると、たぶん誰でもこの壁にぶつかる。作ったものの価値は、使える人が増えて初めて出る。そのための材料として、この画面を見せていくつもりだ。

まとめ

  1. 人が読み上げているものは、まとめる余地がある。 自動化の次の一手は、周りの人の手作業の中にあった
  2. つながらないなら、ファイルを置けばいい。 直接つなぐ方法が仕様の壁で使えなくても、ファイルを介せばたいていつながる。3回目で確信になった
  3. 作れる人と使ってほしい人が違うと、価値は届かない。 1人だけがAIを使える環境の限界は、作る側の工夫だけでは越えられない

アーティファクトで何か作ってみたい、という軽い気持ちで始めたが、終わってみると使い道の見つけ方と、社内でAIを広げることの難しさの両方を学んだ1本になった。


※この記事は2026年9月時点の社内環境での検証結果です。コネクタの仕様は更新されることがあります。