毎月2時間かかっていた報告書

毎月、お客様に提出している報告書がある。その月に対応した機器の保守を、1件ずつ表にまとめたExcelだ。

材料は2つある。

  • Salesforceの受付記録:いつ受け付けて、いつ完了したか
  • 完了報告のメール:現場で何が起きていて、何をしたか

同じ案件のことが、2か所に分かれて書いてある。これを見比べながら、1件ずつ手で打ち込んでいた。毎月だいたい2時間かかる作業だった。

作ったもの

完了報告のメール(Outlook)   Salesforceのレポート(Excel)
          ↓                            ↓
        Claudeが突き合わせる(受付番号などで同じ案件を探す)
                       ↓
        前月の報告書をひな形に、今月のExcelを作る
                       ↓
        自分で確認して、直すところは直してもらう
                       ↓
        「アップロードして」と言ったら、共有フォルダへ送る

2時間が10分になった。 Salesforceからレポートを出して渡すところから、確認、送るところまで含めてだ。

速くなったのはもちろん嬉しい。ただ、作ってみていちばん効いたと思ったのは、速さとは別のところだった。

どちらのデータを信じるか、項目ごとに決めた

2つのデータは同じ案件のことを書いているのに、中身が食い違うことがある。

わかりやすいのが部署名だ。Salesforceには、組織変更の前の名前のまま登録されている部署がある。一方、メールには今の名前で書いてある。同じ部署なのに、名前が違う。

逆に、日時はSalesforceのほうが正確だ。受付も完了も、時刻まで記録されている。

そこで、項目ごとに「どちらを正とするか」を決めた。

項目 正とするほう 理由
部署名 メール Salesforceは組織変更前の名前が残っている
受付・完了の日時 Salesforce 時刻まで正確に残っている
現象・原因・処置 メール 現場の報告そのもの。足りない分はSalesforceで補う

「どちらか片方を信じる」でも、「毎回見比べて人が判断する」でもない。項目ごとに先に決めておく。

手作業のころは、これを毎回その場で判断していた。ルールにして渡してからは、Claudeは毎回同じ判断をする。

2つのデータが食い違ったら、項目ごとに「どちらが正しいか」を先に決めておく。

月次の照合作業を自動化した記事でも、2つのデータの突き合わせに苦労した。あのときに先にこれを決めておけば、もっと楽だったと思う。

決められないものは、聞いてくる

ルールをどれだけ決めても、判断できないものは残る。今回は、次の3つは推測で埋めずに聞いてくるようにした。

  • 部署名が食い違っていて、どちらとも判断できないとき
  • 完了報告のメールが見つからない案件
  • 報告の対象に含めるかどうか、こちらでしか判断できない案件

書いていて気づいたが、この考え方は3回目だ。

記事 判断がつかないとき
46万件のファイル整理 迷ったら全部「要確認」に入れる
書類のチェック 推論せずに確認する
今回 推測で埋めずに聞いてくる

別々の仕事で、同じところに落ち着いた。ファイルでつなぐ話と並んで、AIに仕事を任せるときの定石だと思っている。

いきなり本番を作らない

最初の1回は、わざとテスト版として作った。

ルールが多い業務なので、いきなり本番を作ると、細かい認識のずれがそのまま報告書に入ってしまう。まずテスト版で一度作らせて、出来上がったものを見ながら「ここはこう書く」「これは載せない」と擦り合わせた。そのあとで本番を作った。

本番でも、見直しで直したところはあった。そこは指示して直してもらい、同じ間違いが二度起きないようにルールに書き足した。AIへの頼み方の記事で書いた「同じことを二度説明したら、文書にすべきサイン」を、そのままやった形だ。

送るのは、人の目を通してから

完成した報告書の置き場所は、お客様と共有しているフォルダだ。上げた瞬間に、お客様から見える。

だから送る操作だけは、自分が中身を確認して「アップロードして」と言うまで動かないようにしてある。

作業 担当
突き合わせて報告書を作る Claude
中身を確かめる 人
共有フォルダへ送る Claude(人の目を通してから)

書類の仕分けの記事では「運搬・判断・確認」を分けた。今回はそれに「外に出すものは、必ず人の目を通す」が加わった。

社内で間違えても直せばいい。でも外に出たものは取り消しにくい。AIに任せる範囲を広げるほど、この線引きは大事になると思う。

ちなみに、標準の機能ではExcelのファイルを送れなかったので、送り方は別に工夫して用意した。細かい話なので、ここでは省く。

スキルにして、来月も同じ品質で

ここまで決めたルールは、すべてスキル(Claudeに渡す手順書)にまとめた。来月からは「月次報告書を作って」と言って、Salesforceのレポートを渡すだけだ。

表記の揺れなど、新しいパターンが出てきたらスキルに書き足していく。最初から完璧なルールは作れないので、毎月少しずつ育てていくつもりでいる。

もうひとつ。朝の1画面を作った記事では「作れる人と、使ってほしい人が違う」という壁に当たった。今回は自分の仕事を自分で楽にしたので、その壁はない。作ったその月から、ちゃんと使われている。

残っている手作業

正直に書いておく。

Salesforceのレポートは、毎月自分で出して渡している。 ClaudeからSalesforceを直接読めるようになる予定だったが、延期になった(Salesforceの記事で書いた続編も、それ待ちだ)。数分の作業なので、10分の中に収まっている。

メールのほうは手作業がない。完了報告のメールは、Outlookの振り分けルールで決まったフォルダに自動で集まるようにしてある。Claudeはそのフォルダを読むだけだ。材料の置き場所を先に決めておくと、任せる側はずいぶん楽になる。

まとめ

  1. 2つのデータが食い違ったら、項目ごとに「正」を決める。 決めておけば、AIは毎回同じ判断をする
  2. 決められないものは、推測で埋めずに聞いてくる設計にする。 別々の仕事で3回目になった
  3. 外に出すものは、人の目を通してから。 作るのも送るのもAIに任せられるが、その間に必ず人が中身を見る

2時間が10分になったのは結果で、効いたのは「どちらを信じるか」を言葉にしたことだった。手作業のころは頭の中にあった判断を、ルールとして外に出した。それがそのまま、AIに渡せる形になった。